R.D.ジョンソン氏のパターンブックでは「USMC????Pattern」として紹介されていますが、氏の、このパターンについての評価は高くありません。
しかしながら、よくよくみると「ひよこ」や「ヘビケラ(ナウシカに出てくる)」もいたりして、VMX(Vietnamese Marine Corps Experimental)パターンを直接の祖先としてJW系とは別の系統の進化(笑)をしたパターンのようにも見えます。ジョンソン氏も、USタイガーのパターンのモチーフ自体は「オールド」なことを認めてはいますが、当時(ベトナム戦争期)にこのパターンが生産されていたかどうかは疑っている様子です。
ジョンソン氏のパターンブックによればその始まりは韓国にて生産され、1975年頃には米国に輸入されていたように読めます。(その後、80年代には米国にてプリント、逆輸入され、いわゆる「USタイガー」として日本で認識されるようになったものではないでしょうか。)
では、見ていきましょう。
当時の典型的なスタイル、腰2ポケット
この個体の生地はなんと「コットン・ナイロン」のヘビーウエイト(表記等はどこにもないけど)

背面全景

腰ポケットの詳細
フラップから露出するひとつボタン、味わいのある二重ステッチに留意

ボタンのクローズアップ
左はUSユーテリィティシャツのボタン

ボタンの裏面
ユーティリティのボタン(左)との比較
一般的なUS、あるいは日本製のようなレイズドバック(へそ付き)スタイルではなく、段差の付かないタイプであることに留意

古いパターンにさかのぼる「ひよこ」(笑)
JWD(ジョンウェイン濃密系)以降にはみられない。

古いパターンにさかのぼる「ヘビケラ(ナウシカに出てくる虫)」
JWS(ジョンウェイン希薄系)以降にはみられない(たぶん)。

解りやすくするため、ジョンソン氏の「タイガーパターン」を引用させていただきます。
VMX(Vietnamese Marine Corps Experimental)パターンの背面
背中中央上段に「ひよこ」
同じく中段に「ヘビケラ」

引用先「TIGR PATTERNS 」:p84
:Sgt. Richard Denis Johnson / Schiffer(1999)
もちろん、オークションなので疑わしければ応札しなければ良いのですし、小金を持ったオサーンが「ぼったくられる」分には「自己責任(嫌な言葉ですが)だよ、あはは」で済みます。しかしながら、オークションのキャプションを信じて、若い人なんかがせっかく苦労して貯めたナケナシのお金を突っ込んじゃったりしたらちょっと気の毒です。
(誤解なきように付言しなければなりませんが、ネットオークションにて「業として古着を扱っている方」のタイガーストライプのほとんどは適切な表示をされています。)
たとえば「60年代ビンテージ ベトナム戦争 タイガーストライプ シャツ」として落札されちゃった中田商店のJWDっぽいもの

いや、パターンの雰囲気はとっても良くできていて製品としてはすばらしいのだけど。
http://page16.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/u78737795
そして、アレ政権が事例として持ち出すのが「邦人救出」というたとえ話しです。「邦人(民間人?)が避難のため乗船している同盟軍の艦船が攻撃を受けそうになったとき、近くにいる自衛艦がそれを助けず見殺しにするのかっ!!」とかいういかにも3Kシンブン信者の喜びそうなシチュエーションです。はあ〜(ため息)、そもそも民間人が、何で外国軍の艦船に乗る?普通は非軍事の政府チャーター船とか航空機で避難するでしょう。百歩ゆずって、同盟軍の近くに日本の自衛艦がいるのであればそっちに乗せろよという話です。そんな特殊な状況を持ち出して一連の法改正が「平和と安全法制」というのだから政権の程度が低すぎです。
未来の日本社会の安全保障のために、もっとリアルな長期戦略を持てよって感じです。世界大戦にまで至った昭和の軍国主義ファシズムをきちんと総括して近隣諸国に反省を表明することが、道義的にも経済的にも安全保障上もリーズナブルな選択でしょう。米国のリバランスドクトリンには形だけお付き合いさせていただいて、日本は今まで70年も戦争をしないでやって来た(アジアの近隣の戦争ではちゃっかりもうけちゃってたけど)のだから、日本国の非戦の実績を積み上げて「紛争屋(たとえば紛争屋の外交論―ニッポンの出口戦略 (NHK出版新書 344)
)」としての国際ブランドを押し出していけばいいのに。
アレ政権の薄っぺらい歴史観と勘違いで、隣国の軍事的台頭にレイズで対抗しようとしているこの戦略感のなさが二重にため息です。
平和と安全のための法改正というこの流れ、いやまずいでしょ。自衛官であっても「政権の都合」で死ぬ必要はありません。
今回の「入門編」では、「べトナム戦時のM-1ヘルメット」をテーマとして、「その1」では、ライナーを中心に観ていきたいと考えます。
さて、M-1ヘルメットの構造上の最大の特徴として、外殻帽(シェル)と内帽(ライナー)の二重構造になっている点が挙げられます。それぞれ外帽をシェル、内帽をライナーと呼称します。また、当稿では、ライナー(内帽)の内装部分について、ライナーを懸架保持する部分を「サスペンション」、皮革製の汗止め帯を「ヘッドバンド(スウェットバンド)」、後頭部の保持帯を「ネックバンド」、あごひもを「チンストラップ」などと表記しています。(様々な呼び方がされて紛らわしいので念のため言及しました。冒頭から煩わしくてすみません(笑))
重要な追記(2015/5/10)
ライナー篇その1を始めては見たものの、早速混乱しています。
この記事は、主にJim Rogers氏の「STEEL POTS, the M-1 combat helmet, An American military icon」という記事を参照しながら記述してみたものです。
ところが、調べれば調べるほど混乱が深まります。
まず、ライナーのMILスペックですが二つの規格が同時代に併存しているようなのです。
MIL仕様書に直接当たれた訳ではないのですが、断片的情報を総合してみると
MIL-L-1910 LINER, SOLDIER'S STEEL HELMET
MIL-L-41800 LINER, GROUND TROOP'S HELMET
(それぞれにタイプ1と2があり、1は標準仕様、2が空挺仕様になります。)
で、1910のほうが、コットンダック/ドリル製で、41800のほうがナイロン製(
MIL-L-1910A (Spec number)
DSA-1-374-E-62 to Firestone (date of contract is 9MAR62)
DSA-1-2479-E-62 to Firestone (date of contract is 20APR62)
DSA-1-1284-E-63 to Marmac (date of contract is 31AUG62)
MIL-L-1910B
DSA-1-4741 to Pat-Ric (date of contract is 17JUL64)
このことによって、ライナーのフルモデルチェンジの時期については確定的なことがはっきりしなくなってしまいました。フルモデルチェンジは、64年より前(61年?)であったのか、あるいはM56などとも呼ばれているので56年には既に変更していたのか、はたまた64年のMIL-L-1910のアメンドメントAからBへの変更が、そのモデルチェンジに該当するのか?謎は深まるばかりです。
(以下、64年型という表記は直してありませんが、「64年型」かどうかは保留します。)
重要な追記その2(2015/5/24)
ネットであれこれ検索してもなかなか確定的なことが解らなかったので、アマゾンで、M-1ヘルメットのオーソリティー MARK A. REYNOSA氏の「POST WW2 M-1 HELMETS an illustrated study」をつい買ってしまいました。円が弱いので結構な値段です。(まーでも、ちょっとしたトコで一回飲んだと思えば一緒か)
・・・で、その結果なのですが、前述のジム・ロジャース氏の記事内容とほぼ一致です。おまけにカラー写真が豊富なので良く解る!
大戦後、MIL-L-1910シリーズが1951年からリプロダクトされて55年に小モディファイ、そして64年にサスペンションを一新(仮にクレードル型と呼びます)し、69年まで生産されています。
一方、MIL-L-41800(ナイロン素材)は、64年から、クレードル型の「新型サスペンション」が採用され、72年には、Aワッシャー固定から着脱式サスペンションが採用されました。
いや、専門書があるアイテムは謎が解けて本当に助かります。
という訳で、写真にて見ていきましょう。今回はライナー編です。
正面アイレット(ハトメ穴)が廃止された1955型M-1ライナー(左)と、皮革チンストラップが廃止されサスペンションデザインが一新された1964型M-1ライナー(右)
55年型ライナー側面のチンストラップ用のおおきなリベット(カシメ)に注意、内側のチンストラップ用のピンを固定している。64年型には見当たらないことに留意

両ライナーの内側の比較
55年型のデザインは、二次大戦中のデザインをほぼ踏襲している。
64年型で、ハンモックおよびネックストラップが一新された。また、ライナーのチンストラップが廃止された。

両方とも64年型ライナー
(素材が違う?→追記:両者ともMIL-L-41800のナイロンラミネートでした!)
左:MIL-L-41800C
1968年以降、材質はナイロンラミネートに全面的に移行
右:MIL-L-41800D 70年代初頭の製品(ナイロンラミネート製)
材質は、60年代を通じコットンレジン製とナイロンラミネート製が平行して生産された。

クレードル型ライナー(写真はMIL-L-41800系)のネックバンド
3点のストラップにて取付けられていることに留意

クレードル型ライナーのバリエーション
左:通常型
右:空挺タイプ V字型のチンストラップ用ストラップとシェル固定用スナップボタン(ソケット)に留意
両者とも、ネックバンド(下)を外した状態

MIL-L-41800系のバリエーション(側面)
左:通常型
右:空挺タイプ シェル固定用スナップボタン(黒)に留意
ライナーの素材が柔らかいため?ほとんどの塗装がはがれ落ちてしまっている。

空挺タイプのネックバンドおよびスエットバンドを取り外したところ
ハンモックはA型ワッシャーで、ライナーに直接リベット止めされていることに留意

同じく、ハンモックに印字されたコントラクト表示のクローズアップ
LINER, SOLDIER'S STEEL HELMET (COMBAT) TYPEⅡ
タイプⅡは空挺仕様を表す。

また、2010年11月14日付「M-51 PARKA SHELL 薄手コットンポプリン/平織りの生地?」http://parkashell.exblog.jp/11563062 のコメント欄にて、misaruさんからUSMCモデルの袖の特徴についてご指摘をいただいておりました。
さて今回のパーカー狂さんからのご指摘は、袖や裾パーツの生地の違いは「意図された仕様」なのではないか?というものです。パーカー狂さんが所持されている複数の個体のほか、e-bayにも出品されているなど、一定数のUSMCモデルが該当するようです。
記述者川村はそれまで、そでの色調の違いは、それぞれ作成された「パーツ」を寄せ集めて縫製する時の、パーツ生地ロットの違いくらいにしか認識しておりませんでした(ERDLファティーグなどにも色違いパターンなどがよく観察されます)。
ただし、袖口のストラップの仕様(通常版とは反対方向に付いている)の件でも明らかになったように、USMCモデル仕様には独自のこだわり?があるようにも思えます。したがって、今回の件も慎重な考察が必要と思われます。皆さんはどう考えますでしょうか?
e-bay(US)出品中のUSMCモデル
袖口、裾パーツの色調が異なる。
(考察のため、e-Bay出品中の写真を引用させていただきました)

袖口のストラップの取出し方向にも留意


標準的なM-51
MIL-P-11013A
MILLVILLE SPORTSWEAR.INC.
1953年6月16日 A.S.T.A.P.A.
袖の色違いは、いくつかの個体に観察される。
