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M-51Parkaに関する2,3の事柄

「マイナ保険証」の本質は、本邦で急速に進行しつつある「現役世代減少社会」に対応するためのひとつの手段だよ

 もうね、最近「マイナ保険証」に関する的はずれな批判とかが巷に遷延してるから、いちど整理してみたいとおもいます。
 とくに「リベラル」を自称する人々による問題の本質をはき違えた近視眼的批判は、先の衆院総選挙後の政策課題の優先順位にも現れていて、まずは「企業団体献金の廃止」に切り込むべきところ、「マイナ保険証どうなったー」「ウラギリモノー」とかもうNTUYと遜色ないレベル感です。

 そして、WACとか飛鳥新社とかから出版される雑誌並みのクオリティで「マイナ保険証の罠」とか「6っの嘘」とかが出版され、情弱の釣られやすい高齢者さまに結構売れてたりします。それらの著者は、医療機関の事情に全く疎い素人で、保険診療業界にはびこるブルシットジョブのことなんかまったく理解してません。なので、平気で「紙(プラスチックカード)保険証を残せ!!」とか、「いままで通りでなんの問題もなかったー」とか平気で言い放っていたりします。

 そもそも、上記の著者らは、企業とかでシステム更新の現場に立ち会った経験とか全くないと思われます。
システムなんてどんなに準備したってバグとか初期トラブルとかつきものだし、1億件を超えるデータの紐づけとか(それも手作業こみで)普通に考えたってトラブっちゃうの当たり前だし。それを「それ見たことか!!」「全然ダメじゃん!!」とか糾弾して社会に吹聴して自分で気持ちよくなってるだけでしょう。
 それから大手システム企業の利権ガーとかの陰謀論もやめてほしい。そもそもIT現場も人手不足で回ってない現状とかまったく理解してないよね。
 あと、ご高齢者さまも「よくわかんないから今まで通りでいいや」とか言ってないで、ちゃんと自分で学ぶ姿勢が大事だよ。 あと15年~もすれば、社会の半数近くのひとびとが還暦以上になってるんだから、これ以上、若い世代に負荷かけてどうすんのさ。

 レセコン(レセプトコンピュータ)や、電子カルテのシステム導入のときも、現場では似たような反対が、医療機関ごとの濃淡はあるにせよ現場、主に医者から起こったリしたと思います(その時は「患者」は関係なかったからこんなクソ本も出版されなかったと思う)。でもね、レセコンに慣れちゃえば手書きレセプトには戻れないし、電子カルテに慣れちゃえば、手書きの紙カルテ運用は困難でしょ。
 だから、電子資格確認システムのその先にある「全体像」をとらえ、診療に付随する保険業務の極小化を目指して医療提供体制の崩壊を防ぐ必要があるよねということが今日の課題なのです。

 厚労省がなんでこんなに急いでいるかは、清家篤先生が座長の「全世代型社会保障構築会議報告書(2022)」に書いてあるとおりなんだけど、じつはこの報告書、民主党政権下の「社会保障制度改革国民会議報告書(2013)」(これも清家篤先生が座長)の骨格を継承するもので、以前の報告書の中身には、介護を社会化する「地域包括ケアシステム」の構築のほかに、現役世代支援の少子化対策や社会的セーフティネットの構築などの重要なイシューも強調されておりました。
 ところが!2013年に自民党(アレ政権)が復権し、現役支援・子育ての社会化ツールであった「子ども手当」は廃止され(子ども手当法案可決のとき「この愚かものどもめ」と宣ったのが今回無事落選した丸川珠代w)、社会的セーフティネット構築も「自己責任論」の猖獗で棚ざらしになってしまいました(今年2024年10月から「子ども手当」と似た内容は復活したけど、アレ政権によって失われた10年は取返しがつかない。ホント「国賊」とは奴らのことだよ)。
 さて、そのような状況のなか、アレ+ガースー政権下で本邦の大事な10年が奪われ、深刻化する働き手の不足が予想されるなか「医療提供体制」の確保のため、考えうるあらゆる手段を構築、動員する必要があるよねとなったそのひとつが「医療DX」の社会実装ということです。

 そこで構想されていることは、医療機関をセキュアな回線で接続し、「医療情報のプラットフォーム」を構築して、いままで紙でのやり取りをしていた処方箋や診療情報提供書などの迅速化簡易化を図ったり、あるいは診療報酬請求の内容を患者が毎月確認できたり、あるいは人海戦術でこなしていた医療事務作業の低負荷化簡易化が図られたり、あるいは紙のカルテであったクリニックには標準化された電子カルテシステムが導入されたりなど、保険診療制度にまつわる様々な煩雑な事務について、モダンシステム化によって現場の負荷の極小化を図ろうとするものです。

 その最初の第一歩が、「AさんはAさん」、「BさんはBさん」という患者の自己同一性(ID)を確定させること、そのうえで「Aさんは現在「協会けんぽ」の資格が有効」、「Bさんは現在「理容師国保組合」の資格が有効」という保険の「資格の有無」をオンラインでサーバに電子的にリアルタイムで確認するということをマイナンバーカードの一部機能を利用して行うのが「マイナ保険証」ということなのです。そうすることによって、すでに転職して「〇〇健保組合」の資格がないよ!というCさんのレセプトが宙に浮くことも防止できます。
 それって、「マイナンバーカード」でなくても良くね?ということではありますが、同じ仕組みを別建てで作ったら、「同じ仕組みを二重につくって行政の無駄遣いだー」と騒ぐひとがきっと現れます。
 
 一方、今の現場の声は、「でも、ぜんぜん楽になってないよ。たとえばマイナ保険証はその他の併用する医療証の情報が確認できないから、結局紙の医療券も必要だし」という声もあると思います。だからこそ、公費も含めた、社会実装の加速化が必要なのです。中途半端にレガシー運用を残せば残すほどその事務負担も倍となりかつその期間も伸びます。ただ、現行の「保険診療制度」はあまりに煩雑なため一挙的な解決はできません。時間と手順が必要です。
 その第一歩として、いままで紙のアナログ運用だった各医療機関にVPN回線を実装する、インフラ構築の局面がやっと始まろうとしているというところです。それまで、レセプト請求のデータは毎月、毎月、数十万枚のCD-ROMを手作業でコンピュータに読み込ませていました。今回、一連のレセプト請求はオンライン提出に移行し、いわゆるここでもブルシットジョブの小さな一端が解消されつつあります。
 思い出すのは、2021年の感染症パンデミックの初期の状況です。当時、感染症「発生届」は完全に紙ベースで、FAXで発生情報をやり取りし、集計していました。時間経過とともにオンライン化が進んでいきましたが患者基本情報の登録ほか様々なベーシックな情報は結局手打ち入力が必要で、かつ集計データの並び順などもそれぞれなのでそのデータクレンジングもやっぱり手作業でありました。これが21世紀の自称「ハイテク国家」の実相だったわけです。
 ところが、今回の「マイナカードガー」とか騒いでいる人たちは、当時「えーっ!FAX(笑)、まじか!行政、まじめに働けよ(笑)」とかヒトゴトで言ってたわけです。まあ、NTUYが騒いでるだけだったら気にしなければ良い話なのですが、日ごろ社会問題に蘊蓄を垂れてる自称「リベラル」さまたちや「憲法を護れー」と騒ぐ高齢者さまたちが、医療のDX化にマト外れな批判を喜々として行ってるわけです。「ぼーっと生きてんじゃねーよ!」

 ここでは「マイナンバー制度」そのものの是非はあえていったん措いておきますが、せめて保険診療制度の持続可能性を護るため、医療提供体制のモダンシステム化の邪魔はしないでほしいと切に願うのでした(そもそも保険資格確認には、いわゆる「マイナンバー」は使用されないし)。

現役減少社会を図示するとこんな感じ
1990年代以降の30年間は、高齢者人口(水色とグリーンの帯)が激増するフェイズ、2010年ころをピークに人口減少がはじままり、2020年以降は高齢者人口は横引きになるが、現役世代(ピンクの帯15歳~64歳)が激減していくことに留意
「マイナ保険証」の本質は、本邦で急速に進行しつつある「現役世代減少社会」に対応するためのひとつの手段だよ_a0164296_01050873.png
(出典)内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」

by poemaquince | 2024-11-04 01:20 | アレという国難 | Comments(0)