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M-51Parkaに関する2,3の事柄

映画「アルジェの戦い」観てきました。(番外編)

 ほんとは、新宿で、午前中にクロサワの「七人の侍」観て、午後にこの「アルジェの戦い」をみようと勝手に予定してたんだけど、なんと「七人の侍」の上映時間が200分を超えていて、午後一時の「アルジェの戦い」の上映時間に間に合わないことがわかりました。仕方なしクロサワは見送りです(とほほ)。
 というわけで、新宿「K'sシネマ」で「アルジェの戦い」観てきました。川村はアルジェリアの独立戦争のイメージとして、組織されたゲリラ部隊とフランス空挺部隊との「武力衝突・戦闘」を勝手に思い描いていました。例えば「地下水道」(1956)とか「ネレトバの戦い」(1969)とかのような「パルチザンの戦争映画」のようなイメージをもっていたのです。ところが映画「アルジェの戦い」にて描かれる「闘い」にそのようなシーンはほとんど出てきません。
 映画の冒頭から、フランス空挺部隊が登場します。空挺部隊はカスバの住民のじいさんを拷問して活動家のリーダー(主人公)の居場所を吐かせ、彼の隠れるカスバ(旧市街地)の集合住宅を襲撃するシーンから始まります。アジトを包囲する空挺隊はリザードパターンのジャケットを着てます。モノクロなので、見た目ほとんど「タイガーストライプ」(笑)です。
 住宅に踏み込まれ、隠し小部屋に立て籠る主人公たちのシーンから、時間は数年さかのぼり、FLN(民族解放戦線)の闘争のお話につながっていきます。当初は、武器の強奪などのため?警察署の襲撃や、警察官の襲撃、あるいはストライキなどの闘争を展開するのですが、フランス空挺部隊の治安投入と並行して、戦術はエスカレートしていきます。びっくりしたのがソフトターゲットへの爆弾闘争です。FLNはコロン(在アルジェリアフランス人)の集うディスコティークや、カフェなど吹き飛ばします。50年代の民族解放闘争でまさか無差別の爆弾闘争戦術を取っていたとは知りませんでした(もちろんその伏線にフランス軍がカスバの集合住宅をこっそり非合法に爆弾で吹き飛ばしてしまうエピソードがあるのですが)。
 最終的にフランス空挺部隊は軍事的にアルジェの制圧に成功します。しかしながら数年後、自然発生的なアラブ人達の街頭抗議行動が生まれ、1962年、結局アルジェリアは独立することになります。映画に描かれはしないのですが、史実としてはフランス本国の独立容認派(なんとゴリゴリの保守派ドゴールも!)と在アルジェリア(海外領土)フランス人の極右独立反対派との政治紛争、フランス軍の軍事クーデター(!)など非常に興味深い展開もあるのでした。

フランス第10空挺師団 F.マチュー中佐の着任(このスチルでは、ちゃんとリザードに見えますねえ)
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アルジェ、カスバでの弾圧
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アルジェ制圧後の60年?街頭行動 このSU-100(?)は、独立後に実際にアルジェリア政府に供与されたものなのかな? 
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 いずれも映画「アルジェの闘い」のスチル写真です。

(閑話休題)
 そういえば、少し前にパトリシオ・グスマン監督のドキュメンタリー映画「チリの闘い(三部作)」(1975/78)をユーロスペースで観たんだけど、こちらも想像していた内容とだいぶ違いました。特に第二部でクーデタにより大統領府が攻撃されるシーンがあるのだけど、なんか「孤立無援」という印象です。あれほど「アジェンデ!アジェンデ!」と叫んでいた民衆は写っていません。別の場所で戦っていたのかな?なんだか「ジーザスクライスト・スーパースター」(1973)を思い出してしまいました。群衆が熱狂的に「たたえていた」イエスを、その同じ群衆が「磔刑にせよ」とピラトに要求します。そのイエスの姿のがアジェンデ大統領に重なって見えたのでした(泣)。
 同じ時期に、同じチリの同じ時代を描いた「コロニア」(2015)も観たのですが、これまた想像していた内容とだいぶ違いました。アジェンデの失脚とピノチェットのクーデターを背景にしたサスペンス映画と思っていましたが、なんと「ピノチェット軍事政権と結託するナチ残党「カルト」」のお話でした。
 全然関係ないけど、タミルイーラム解放の虎(だっけ)の元兵士がフランスで難民として生きる「ディーパンの闘い」(2015)のオープニングも「タイガーストライプ」(笑)だったなあ。いや、この映画「ディーパンの闘い」泣けます。お勧めです(観たときはぜんぜん気にしてなかったのだけど調べたらカンヌ”パルムドール”でした!!すげー)。
by poemaquince | 2016-10-24 23:39 | 映画 | Comments(0)