M-51Parkaに関する2,3の事柄

「軍事オンチが日本を滅ぼす」 あるいは隣国の軍事的台頭にいかに対応すべきか

 2015年9月19日、ついに日本の「専守防衛」という軍事ドクトリンが「ゴトリ」と音を立てて廻転しました。
 70年前、欧州のファシストと同盟し「ならず者国家」(笑)として世界を敵にまわして戦ったのが日本でした。その戦争に敗北し、結果300万人の日本人と2000万人のアジアの人びとが犠牲となりました。その命と引き換えに「自由」と「人権」と「平和」の社会を手に入れた日本なのです。ところが、戦争が終わって70年ののち「自由」と「人権」は国家のシモベであると信じちゃって、社会の基盤構造である「日本国憲法」を憎み、実は安全保障の薄っぺらい表面しか見えていないアレ首相によって、拙速な法案が成立しました。
 この法案の成立でアレ首相の応援団(ネトウヨともいう)の自称リアリストたちが、日米同盟が「強化」され、「抑止力」の向上に役立つと喜んでいます。彼らが本気でそう思っているとすれば、かれらの平和ぼけ(「お花畑」ともいうらしい)は相当深刻といえるでしょう。
 彼ら自称「リアリスト」の皆さんは、《この法案の成否に関わらず、米国は中国と「コト」を構えるときは構えるし、構えないときは構えない》ということが理解できていないのです。「血の同盟」の深化などという美麗字句をマに受けちゃって、最後にババをつかまされることが分かっていないリテラシーのさびしい人びとです。
 米、中はその経済相互の補完/依存性によって、20世紀型の戦争ができる関係にはありません。(そもそも中国は、米国国債に関して日本とならぶトップクラスの債権者です。)そして、それは日中関係においても同じことがいえます。(たとえば、もし中国とコトを構えるなら、食品や衣料品、薬品やあらゆる原料、その他資材などがストップします。市民生活は立ちいかなくなり、それこそ「存立危機事態」として、戦争遂行どころの話ではなくなります。自称リアルな人たちは軍事について、その背後に求められるべき莫大な経済システムと、今にち、日本がそれをどこから調達しているのかということについて理解が及んでいないのです。)
 では、隣国の「プロ独」国家(笑)の軍事的台頭にはどのように備えるべきなのでしょうか。
 その最善の解は、「戦略的互恵関係の構築」です。アレ首相も言っている言葉まさにそのものです。ところが、アレ首相はしゃべるべき「フレーズ」は言えましたが、語るべきそのフレーズの内容を理解せずに使っているように見えます。そもそも「言葉」だけで、やる気がないのか(あるいはファナティックな「日本会議」イデオロギーの信奉からか)中国からの対話のシグナルもスルーでした。
 良い悪いは別として、現実の国際社会は「国際連合/国連憲章」という枠組みを基盤にうごいています。そして連合国から見て「ならず者国家」であった我が国もその枠組みに同意し、昭和の軍国主義と決別してサンフランシスコ講和を通じて国際連合の仲間に入れてもらいました。ところが、アレ首相は、受け入れたはずの国連の枠組みを「いや、実はあれは自衛のための正しい戦争でした」とあとだしでひっくり返す認識をあちこちで示唆しています。以前の稿でも繰り返し言っていますが、まさにこのアレ首相の「歴史認識」が安全保障上の致命的なリスクとなっている訳です。ケリー国務長官、ヘーゲル国防長官の戦没者墓苑の献花やメルケル首相のアドバイスなど親密な同盟国からも懸念が示されたのは皆さんご承知のとおりです。
 国連憲章51は、国連措置の発効まで、暫定的に各国に自衛権(個別的/集団的)を認めているに過ぎません。しかしながら、特定の国がもし他国を相手に戦争を始めようとするときには必ずこの国連憲章51に基づく「自衛権の発動」という手続きを装います。我が国に対する「急迫不正の侵害」を真に阻止しようと考えるのであれば、その最大の抑止力は、その意思を持つ相手方に国連憲章上の「自衛権の発動」という口実を与える隙を作らないことです。(追記:95年の議決で事実上無効化されたといわれる憲章53条、107条などのいわゆる「敵国条項」についても引き続き留意が必要なことも当然ですが、)くだらない歴史認識で、周辺国の神経を逆撫でしない大人の振る舞いが求められているのです。
 人口で10倍、GDPで3倍の規模の新興大国である隣国と、「戦略的互恵関係」をきちんと構築できる政権が一刻も早く登場する必要があるのです。

注※「プロ独」→「プロレタリアート独裁」の略、「プロレタリア」(無産者階級)の独裁的権力が
共産主義社会に至る過程で必然であるとされる論理 一般に社会主義国家の政権政党の論理とされる。「」をつけたのは現代中国の状況が、無産階級による政権ではなく、どちらかといえば60年代型の「開発独裁モデル」を経て現在は「国家独占資本主義」(笑)の段階の様相を呈しているため。(追記2017/5/10)


適切な軍事力は安全保障を補完するが、軍事力のみで安全が保障される訳ではない。
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Japanese Maritime Self-Defense Force destroyer Kurama (R) leads destroyer Hyuga as a Japanese naval flag flutters during a naval fleet review at Sagami Bay, south of Tokyo. Photograph: Yuriko Nakao / Reuters/Reuters

追記:今週、習主席が訪米し、オバマ大統領と会談する。サイバー軍拡について議題になると思うけど、日本もネットインフラの安全保障にリソース配分を拡大すべき局面だと思う。

追記の追記:回りくどくていやらしい↑書きぶりの当稿((笑)すみません)ですが、この場で川村が書きたかったことをすでに「一番槍ブログ」タイガ氏が非常にすっきり書かれておりました。いやほんとそうゆうことです。是非ご参照ください。一番槍ブログhttp://ichiban.militaryblog.jp/e694970.html
by poemaquince | 2015-09-21 14:37 | 安倍辞めろ! | Comments(2)
Commented by タイガ at 2015-10-04 15:11 x
遅ればせながら、記事をご紹介頂きありがとうございます。
私事ですが、実は僕は十代の頃、今で言うネトウヨ少年でした。しかもけっこう重度の。当時の暴走っぷりは、自分への戒めとして過去記事で告白、公開しています。(http://ichiban.militaryblog.jp/e499589.html ※書き込み制限回避のため全角にしています)
なので今、なぜあそこまで急進的なナショナリズムに溺れる人が多いのか、よく分かります。当時の僕がそうであったように、人は『気持ちいい事』には逆らえない弱い生き物なんですよね。特に国家という日常生活とかけ離れたファンタジーの世界で『自分は正しい側に居る』という自己肯定感を与えられると、見事に思考停止してしまうようです。
そして残念ながら、我々ミリタリーマニアの世界は特にそういう傾向が強いように思えます。他人よりちょっと軍事・歴史の知識が有るという浅はかな優越感が、それに拍車をかけてしまうのでしょう。僕はそういう人間をずっと見てきたので、彼らを反面教師にする事で何とか自制心を取り戻す事ができましたが、いい加減ミリタリー趣味業界そのものに嫌気がさしていました。
しかし川村さんのブログと出会い、この狭い世界の中でも批判を恐れず堂々と正論を主張なさる姿勢に、僕は本当に救われた気持ちになりました。もしそれがなかったら、僕は安保問題について反対するにしても、それを自分のブログで公開することは無かったかもしれません。確実に同じ趣味の人たちに疎まれますし、もしかしたら今後嫌がらせを受けるかもしれませんし。
それでも今は、あの一連の記事を書いたことに後悔はありませんし、僕が川村さんの記事に勇気付けられたように、僕の記事を読む人にもその気持ちが伝わる事を願っています。大げさかもしれませんが、その勇気を下さった事に大変感謝しています。ありがとうございました。
Commented by poemaquince at 2015-10-04 23:26
タイガさま
コメントありがとうございます。
「黒歴史」(笑)川村にも覚えが在ります。
まだ中学生の頃でしたが、ヒトラーの物まねが上手い友人がおりまして、学校の文化祭の閉会式で彼に「ヒトラー」として登場してもらいました。
文化祭閉会式の体育館で、会場は急に真っ暗になり、スポットライトがステージ反対側客席後方を照らします。
腕には例のスワスチカ、学生服のツメエリを折り返して開襟にした(笑)黒服ナチの隊列(といっても5、6人)が「バーデンヴィラー分列行進曲」に従って入場してきます。
会場はどよめきとも悲鳴ともつかない声があがり大受けでした。その後、隊列の中からステージに上がったヒトラーは例の口調で「文化祭」閉会の祝辞を述べるというたわいもない内容なんだけど、今から思えばとんでもない話です。でも子どもだったから判んなかったんですね。もう少し諷刺というかナチに対するひねりがあれば良かったんでしょうけど。
でもその時、「闇」と「光」と「音楽」の力を実感しました。その後校内報に「反省の弁」を書いた気もします。(まあ、当時から「バーデンヴィラー分列行進曲」なんて持ってるいやな趣味の厨房でした。)
今では立派に更生し、ファシストに対する警戒心はしっかり育っております(笑)。
ヒトラーの彼はいまでは学校の先生です(笑)。
まあ、人生どう転ぶかってわからないものですが、ミリヲタ関係者であっても結構「リベラル」な方は多いのではないでしょうか?(むしろアレな人は少ないのでは?)宮崎駿先生もそうでしょうし。
ただし、政権の動向を見ていると、いやほんと憲法の求める自由で平和な社会がこれからも続くように願うばかりです。
いつも楽しい(うらやましい)ブログ記事を書いていただき、またいろいろ勉強させていただいており、こちらこそありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。